「相続させる」旨の遺言への、代襲相続の有無

次のような文言の遺言をすでに作成している方がいたら注意してください。場合によっては、遺言を作成し直すことをおすすめいたします。

上記のような文言しかない遺言では、遺言者よりも先にAが死亡した場合は、上記文言はないもとされ、Aの子（つまりこの場合は遺言者の孫）が当然に相続できることにはなりません。

上記のような文言の遺言は作成されることが多いため、注意しましょう。

上記のような遺言で、Aの子が相続できない理由は、「相続させる」旨の遺言には代襲相続規定の適用が否定されるためです。

そもそも代襲相続とは、「本来相続人になる者の地位を他の者が承継して相続人になる」という制度です。典型的なのは、被相続人の子に代わって孫が相続人になる場面です。

たとえば亡くなったのがX、Xの子がA、Aの子（つまりXの孫）がBだとします。Xを被相続人とする相続関係において、AがXよりも先に死亡していた場合は、孫Bが子Aの地位を引き継ぎ、Xを相続することになるのです。

しかしながら、この代襲相続の規定は、「相続させる」旨の遺言には適用されません。

実は「相続させる」旨の遺言に代襲相続の規定の適用があるかどうかは、以前は論点であり、裁判所の見解もわかれていました。代襲相続の規定の適用を否定する見解と、肯定する見解の二つがあったのです。

代襲相続の規定の適用を否定する見解は、次のように述べていました。

代襲相続の規定の適用を肯定する見解は、次のように述べていました。

上記のような二つの見解があったものの、最高裁は次のように判断をし、否定する見解を採用すると明らかにしました。

このような立場が示された以上は、遺言書を作成するにあたっては、受益相続人の死亡に備えて予備的に代襲相続人に相続させる旨を記載しておく必要があります。

遺言書を作成する場合は、たとえば次のような文言を用意することが適切です（代襲相続の扱いを受けることを希望するのなら）。なお、下記の文言は一例であり、すべての場面において下記の書き方が適切だとは限りません。

代襲相続の扱いを受けたい場合は文言の書き方を工夫する必要があるため、少しでも疑問がある場合は専門家に相談するとよいでしょう。代襲相続を実現させる遺言書を作成したい場合はお気軽にお問い合わせください。当事務所では無料相談を受け付けています。