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札幌相続相談所
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自筆証書遺言では、「日付」の記載が求められています。日付が求められる理由は、次の通りです。
上記「1」ですが、遺言書を作成することができるのは15歳になってからです。15歳未満の者は遺言書を作成することができないため、日付を遺言書に記載させることで、遺言書作成者が「15歳」の要件を満たしていたかどうかを、遺言の効力が生じた後に遺言書から確認できるようにしたいのです。
上記「2」ですが、遺言が複数見つかった場合は、後の遺言が優先されます。たとえば「札幌市豊平区の自宅の不動産は長男Aに~」と書いた遺言書の後に、「札幌市豊平区の自宅の不動産は二男Bに~」という遺言書が発見された場合は、豊平区の自宅不動産については後の遺言に基づいて処理がなされることになります。いずれの遺言が「後」の遺言なのかを、遺言の効力が生じた後に確認できるようにするため、日付の記載が必要なのです。
日付を記載しなければいけないのは上記の「1」及び「2」の理由があるからであり、そうすると必然的に日付は「特定の日」を記載しなければいけません。
「特定の日」になっていない「日付」では、残念ながら遺言書は無効になってしまいます。日のない遺言の効力を争われた場面で、裁判所は次のように判断をしました。
年月の記載はあるが日の記載のない自筆遺言証書は、民法九六八条一項にいう日付の記載を欠く無効のものである。(最判昭52年11月29日)
気を付けなければいけないのは、いわゆる「吉日」と書いた遺言書です。「平成29年9月吉日」とした遺言書は、民法が求める「日付」の記載があるものとして、有効なのでしょうか。
これについて裁判所は、下記のように判断をしました。
自筆遺言証書の日付として「昭和四拾壱年七月吉日」と記載された証書は、民法九六八条一項にいう日付の記載を欠くものとして無効である。(最判昭和54年5月31日)
「吉日」という形では、「特定の日」を記載したとは言えないためです。
逆に言えば、「特定の日」が記載されているのであれば、「日付」として扱われる(可能性がある)ということです。したがって、この考え方によると、次の記載の仕方でも、日付としての適格性はあるといえるかもしれません。
しかしながら、万が一遺言の無効が主張される場合に備えて、このような記載の仕方は避けるべきといえます。やはり通常の方法で「平成29年11月14日」というように記載するべきなのです。
実際に日付を記載するとして、その日付は、「いつの日」を記載すればよいのでしょうか?
これについては、遺言書に記載する日付は「遺言の成立タイミングを示す」という機能があることに鑑み、遺言者が遺言の全文を記載した日の日付を記載するべきだといえます。
しかしながら、遺言の全文を記載した日以外の日を「日付」として記載したとしても、遺言は有効であるとされた例があります。裁判所は、下記のように判断したのでした。
遺言者が遺言書のうち日附以外の部分を記載し署名して印をおし、その8日後に当日の日附を記載して遺言書を完成させることは、法の禁ずるところではなく、民法968条の立法趣旨に照らすと、遺言書は、特段の事情のない限り、その日附が記載された日に成立した遺言として適式なものと解するのが、相当である。(最判昭52年4月19日)
裁判所は、「遺言の全文を記載した日以外の日を書いたとしても遺言は無効ではない」と述べたのですが、後日トラブルになることまで考えたら、遺言書の全文と日付は、同一日中に記載するべきだといえます。自筆証書遺言の作成は、一日で終わらせるべきなのです。
自筆証書遺言に書きたいことを全部盛り込んでいたら、遺言書が数枚になってしまうことがあります。このとき、「日付」はどこに書けばよいのでしょうか? 遺言書のすべてのページに日付を書かなければ、遺言書は無効になってしまうのでしょうか?
過去の裁判例によると、日付は数枚の遺言書のうちの1枚に記載されていればよい、と判断されたことがありました(京都地判平成16年8月9日)
自筆証書遺言の「日付」について、お分かりいただけたでしょうか。日付の記載の仕方を一つ間違えてしまうだけで、遺言は無効になってしまうことがあるため、自筆証書遺言の作成は慎重に行わなければいけません。
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